私共は既に162例の手術不能進行癌に対して^<60>Co遠隔照射装置を用いて、低線量率遠隔照射を試みてきたが、(1)予想以上に局所制御率が高く、(2)予想以上に障害発生率が高い、という結果を得た。当施設は2台の^<60>Co遠隔照射装置を有し、従来は固定式の^<60>Co遠隔照射装置を若干改良して、低線量率照射を行ってきたが、1門照射しかできず、精度も不良のため、広い照射野を取らざるを得なかった。高率な障害発生率は照射装置の問題と考えられる。平成6年度は小照射野で多門照射が可能となるよう回転式の^<60>Co装置を改良し、精度測定を行い、小容積の低線量率遠隔照射が可能なことを確認した。平成7年度から平成8年度にかけて食道癌13例、膵癌3例、上咽頭癌2例、子宮頚癌1例および肺癌リンパ節転移巣1例の計20例に対して、本装置を用いて60Gy後および50Gy後のboost治療として、前後対向2門法あるいは3門法にて低線量率遠隔照射法を行った。本年度は従来の方法で治療した166例(コントロール例)の治療成績と本研究による小容積低線量率遠隔照射法を行った20例(研究対象例)の治療成績とを比較した。研究対象例では、従来観察された低線量率遠隔照射直後の全身脱力感は軽度であった。コントロール例では162例中20例(12%)に重篤な障害を認めたが、研究対象例では1例(5%)に出血を認めたのみである。対象疾患ならびに病期は異なるが、コントロール例の1年生存率32%に対し研究対象例の1年生存率は41%であり、生存率も従来の方法に比較し劣っていない。特に手術不能膵癌の2例は肝転移、リンパ節転移を有していたにもかかわらず、本治療法により障害もなく、長期間外来通院が可能であった。本年度はコントロール例と本研究対象例について障害、局所効果および生存率を詳細に検討し、本治療法の適応を決定した。
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