研究概要 |
MRI・病理所見を比較検討するための方法としては,I生前MRIと剖検脳病理所見の対比,II死後MRIと病理所見の対比(Aフォルマリン固定後のMRI,B死亡直後のMRI)が考られる.死亡直後にMRIを施行する方法としては, (1)解剖による脳取り出し前に検査する場合と, (2)取り出した脳をそのままMRI室に運んで検査する場合がある.われわれはこれまでに,3種の方法で(I,IIB(1),IIB(2))各一例ずつMRI検査を施行できた.組織所見との対比検討は完了していないが,実際的な問題点がいくつか判明したので述べる. 1.生前MRI施行例における比較では,MRI検査と剖検までの時間間隔,その間のMRI内組織変化の有無(respirator brainなど)が問題となる. 2.死亡直後のMRIでは,まず近年,剖検数が大きく減少しているという大きな問題がある. 3.日常の検査業務に支障を来したり,夜間や休日の時間外にMRIを行う必要が生じる. 4.剖検によって取り出した脳のMRIでは,脳の変形,空気のア-ティファクトなどの画像劣化が生じた.この問題点を解決するために生食を満たせる容器を試作中である. 5.解剖前に脳MRIを施行した例で最も良好な画像が得られた.ただし,検査待ち患者への影響,検査技師の心理的抵抗などの問題点は残った. 6.フォルマリン固定後の脳MRI施行の経験はない.文献的には報告があるが,脱水による画像の変化が大きい.また検査室にフォルマリン臭が残ることが危惧される.今後は例数を増やし,病理組織所見との対比を進めていきたい.また導入予定の新MRI装置によってFLAIR法も適用してみたい.
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