小腸腺窩において照射直後に出現するアポトーシスの多くがG2期に由来することが推測できた。 実験は雌C3H/Heマウス(10週令)を用いた。以下の二つの方法で照射による分裂遅延時間を測定することによりアポトーシスの由来を推定した。1)2Gy照射後、経済的に小腸腺窩の分裂細胞とアポトーシスの数を数えた。これにより分裂遅延時間を求めた。2)2Gyを照射終了直後に硫酸ビンクリスチン(VCR:0.8mg/kg)を腸腔内に投与して3時間後に小腸を摘出した。照射しないマウスにVCRを腹腔内に投与して3時間後に屠殺した群を対照とした。分裂細胞とアポトーシスの数を数え、分裂遅延時間を推定した。通常は、分裂遅延時間=H(1-M/C)(H=VCRによる阻止時間、M=照射群の分裂細胞数、C=対照群の分裂細胞数)として求める。しかし、アポトーシスがG2期細胞由来であると仮定すると推定方法が異なる。つまり、アポトーシスがG2期に由来する時、分裂細胞数にアボトーシスの数を加える必要があるからである。 1)経済的に、小腸の標本を摘出、観察した群で小腸腺窩における分裂遅延時間を直線回路で求めた。分裂遅延時間は1.3から1.7時間と推定された。これを真の値とする。2)VCRにより細胞分裂を停止し、照射群し対照群を比較し分裂遅延時間を推定した。G2期細胞由来とそうでないときでは、それぞれ1.5時間と2.4時間と推測された。このことから、アポトーシスの多くがG2期細胞由来であると推定した。 アポトーシスは放射線照射による分裂遅延と障害の修復に関与している可能性があると考える。 また、p53発現は、発現している細胞も見られたが、現実的に解釈するのは困難で、更に今後の解析が必要と思われる。
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