1.炎症組織のどの部位に^<18>F-FDGが集積するかを、テレピン油注入後4日目の炎症組織を用いたミクロARGで検討した。前年度のマクロARGでは炎症組織の膿瘍壁に^<18>F-FDGの最も高い取り込みが認められたが、この部位は細胞の膿瘍中心部から外側に行くに従い、炎症細胞層、境界層、肉芽層内側の3層に分けられる。本年度のミクロARGの実験では、膿瘍壁の中でも好中球やマクロファージの炎症細胞、血管上皮細胞、若い線維芽細胞が多く存在する境界層で^<18>F-FDGが最も多く取り込まれた。^<18>F-FDG取り込みについては、まず血流に乗じて炎症組織に運ばれ、透過性の亢進した血管から外に漏れだし、炎症細胞、繊維芽細胞、血管上皮細胞に取り込まれ、それらの活動のエネルギー源として消費されたものと思われる。 2.炎症病巣での糖代謝と血管透過性の関係を、血管透過性の指標である^<131>Iヒト血清アルブミンと^<18>F-FDGの同時投与による二重標識体内分布にて調べた。両トレーサーとも投与直後から漸次増加し1時間後で最大を示した後、2時間後には減少するという、同様の時間的経過を示した。これにより^<18>F-FDGの炎症組織への取り込みは、血流や血管透過性に大きく依存するものと考えられる。 3.血糖値と^<18>F-FDGの炎症組織での取り込みの関係を体内分布実験で調べた。糖を負荷した高血糖群とインシュリンを投与した低血糖群の炎症組織での取り込みは、正常血糖群に比較して低下した。血液での^<18>F-FDGの量は、高血糖群と低血糖群は正常血糖群に比較して低下し、炎症組織での取り込みと同様のパターンを示した。血糖や糖代謝関係のホルモンの影響の他、炎症組織への血流量が反映したものと考えられる。 4.今後、炎症組織での^<18>F-FDGの取り込みを他の因子との関係や、通常の核医学検査での炎症シンチグラフィーのトレーサーとして用いられている^<67>Gaクエン酸との比較検討を行う予定である。
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