ポジトロン標識糖薬剤による炎症組織糖代謝の基礎研究

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06670899
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 山田 進 東北大学, 加齢医学研究所, 講師 (70182532)
• 研究分担者: 窪田 和雄 東北大学, 加齢医学研究所, 助教授 (40161674)
• キーワード: 糖代謝 / FDG / 炎症 / オートラジオグラフィー / 体内分布

研究概要

1.炎症組織での^<18>FDGの取り込みに与える顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の影響を、テレピン油注入により作成した実験的炎症組織での体内分布実験で調べた。テレピン油注入4日目のラットは、G-CSF投与群と非投与群に分けた。G-CSF投与群での炎症組織、脾臓、骨での^<18>FDGの取り込みは、非投与群に比し優位に高い値を示したが、血液、心臓、肝臓、筋肉では両群間に優位の差はなかった。又、血液中では、G-CSF投与群でリンパ球や好中球を含む白血球数が、非投与群に比較して優位に高かった。G-CSFは骨髄での好中球の増殖を刺激し、好中球の活動を増強して創傷治癒に関わるサイトカインと言われている。本実験で炎症組織、脾臓、骨での^<18>FDGの取り込みがG-CSF群で優位に高かったのは、G-CSFのサイトカイントしての機能・作用を直接反映した結果と推察される。
^<67>Gaクエン酸と^<18>FDGの同時投与により、炎症組織での両者の分布を二重標識体内分布、二重標識マクロARGで比較検討した。体内分布実験では炎症作成後4日目で共に最大の取り込みを認めた。この時期の炎症組織は、組織学的に膿瘍中心部を取り囲む肉芽組織の厚い慢性炎症で特徴づけられる。二重標識マクロARGでは^<67>Gaクエン酸は膿瘍中心部を取り囲む膿瘍壁の外側に、^<18>FDGは膿瘍壁の内側に最も高く取り込まれ、組織学的には異なった部位に取り込まれたことが判明した。外側壁は成熟した繊維芽細胞やマクロファージと思われる円形細胞群が見られ、内側には若い血管上皮細胞やマクロファージや好中球の喰細胞が見られた。本研究の結果により、炎症組織での^<67>Gaクエン酸と^<18>FDGを用いれば、炎症反応の違い(組織傷害に対する修復の慢性反応と急性反応)を識別できることを示唆していると言える。

研究成果

• [文献書誌] Susumu Yamada: "Effect of blood glucose on ^<18>F-FDG uptate in experimental inflammatory tissue." CYRIC Annual Report. 126-127 (1994)
• [文献書誌] Susumu Yamada: "Autoradiographic study of ^<67>Ga-citrate and ^<18>F-FDG uptake in experimental inflammatory tissue." CYRIC Annual Report. 171-173 (1994)
• [文献書誌] Roko Kubota: "Microautoradiographic study for the differentiation of intratumoral macrophages, granulation tissues and cancer cells by the dynamics of fluorine-18-fluorodeoxyglucose uptake." Journal of Nuclear Medicine. 35. 104-112 (1994)
• [文献書誌] Susumu Yamada: "High accumulation of fluorine-18-fluorodeoxyglucose in turpentine-induced inflammatory tissue." Journal of Nuclear Medicine. 36. 1301-1306 (1995)
• [文献書誌] Kazuo Kubota: "Feasibility of fluorine-18-fluorophenylalanine for tumor imaging compared with carbon-11-methionine." Journal of Nuclear Medicine. 37. 320-325 (1996)
• [文献書誌] Michael J. Reinhardt: "Assessment of cancer recurrence in residual tumous after fractionated radiotherapy : a comparison of fluorodeoxyglucose, L-methionine and thymidine." Journal of Nuclear Medicine. 38. 280-287 (1997)