肝癌に対する放射線単独療法はほとんど報告例がなく、その臨床経過については未知の部分が多かった。しかし陽子線を用いて高線量を安全に照射することが可能となり、いままで知られていなかった放射線による肝癌の治癒過程を観察することができるようになってきた。20例の経過観察の結果、約1.5カ月の治療期間終了時においては肝癌の縮小は体積にしてもとの約80〜40%程度にとどまっていることがわかった。さらにその後他の治療を全く行わずに経過を観察しても腫瘍の縮小は持続し、約8から約12カ月後に完全消失にいたることがわかった。この縮小率は治療前の腫瘍体積が6cc〜350ccにいたるものまでほぼ同様であった。しかし大型(65.4cc以上)のものになると、腫瘍内に壊死巣が存在し、完全消失にはいたり難い傾向をしめした。長期間の観察により照射野内あるいは辺縁部から再発する症例も4例経験した。これらの再増殖はいずれも照射開始から10カ月以上経過した後に認められたが、どの症例も経過中に完全消失には至らず、詳細に読影するとviableな腫瘍成分が確認されていた。以上より、肝癌の画像診断的な効果判定は照射開始からの縮小速度によらず、10〜12カ月の時点において完全消失に至っているか否かが指標になると考えられた。
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