臨床例10例でUCLAの煩雑な方法でアンモニアPETのダイナミックデータを収集し、UCLAの方法と我々の簡便法と比較し、その正当性と何秒まで左室腔の入力関数を積分するか検討した。さらに正常志願者5例、正常冠動脈症例5例、虚血性心疾患患者30例で本法により、血流予備態を定量し、冠動脈狭窄度による血流予備能を検討した。その結果正常志願者では2.8倍、正常冠動脈例では2.6倍、虚血性心疾患非病変部では2.3倍、75%狭窄部では2.1倍、90%狭窄部では1.6倍、95%以上狭窄部では1.2倍と狭窄度に応じた血流予備能の低下がみられた。ただし、動物実験で報告されているよりは低めの結果であった。虚血性心疾患21例で本法により血流予備能を定量し、また安静時像とジピリダモ-ル負荷像Bull's eye像の比較からfill inの領域を求め、壁運動異常のある領域で血流予備能が低下し、fill in陽性の領域をviableとし、そうでない領域をnon-viableとして、心筋viabilityを判定し、空腹時のFDGPETと比較した。非糖尿病例では1領域を除きアンモニアPETによる心筋viability診断能はFDGPETと同等であった。糖尿病例ではむしろFDGPETでは診断能が低下し、アンモニアPETのほうが優れていた。これは新しい知見である。問題点としては血流予備能が犬の実験で報告されているより、低めにでた事である。その原因として我々はジピリダモ-ル0.56mg/kgの負荷で最大冠動脈拡張が本当に得られるのかを問題にしている。特に老人や高脂血症患者では弥漫性の軽度の動脈硬化による血管内皮障害により血管拡張反応が低下しているともいわれ、このような弥漫性の軽い動脈硬化のある場合、血管内皮障害によりジピリダモ-ルに対する血管拡張反応が障害されている可能性がある。このような血管内皮障害の早期検出、ジピリダモ-ル負荷単独で負荷十分となる場合の負荷についての工夫の検討を行なう予定である。
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