今までの研究経過から、高脂血症や糖尿病などの動脈硬化の危険因子のある患者で、有意の冠動脈施窄のない非病変部領域でもしばしば血流予備能が低下することが経験された。逆に、ジピリダモ-ル負荷時の血流予備能を測定することが、動脈硬化の早期発見につながる可能性があると考え、家族性高脂血症患者を対象に血流予備能を測定した。 虚血性心疾患の既往のない家族性高脂血症患者25例(男性14例、女性11例、年令52.8【+-】7.7)と年令を対応させた対照症例14例(男性9例、女性5例、年令56.2【+-】10.6)を対象とし、安静時およびジピリダモ-ル負荷時にN+13NH_3心筋血流PETを施行し、血流予備能を求めた。 家族性高脂血症患者の安静時血流は79【+-】20ml/min/100gと、対照例の70【+-】17と有意差なかったが、ジピリダモ-ル負荷時は163【+-】67と対照例の286【+-】120に比べ有意に低く(p<0.01)、血流予備能も2.09【+-】0.62と対照例の4.13【+-】1.38に比べて有意に低かった(p<0.01)。男性家族性高脂血症患者の血流予備能は1.85【+-】0.40と女性患者の2.55【+-】0.74に比べ有意に低かった(p<0.05)の血中コレステロール値と血流予備能はr=0.59p<0.01で有意に逆相関した。家族性高脂血症患者では、虚血性心疾患にいたらなくても、びまん性の動脈硬化により、ジピリダモ-ルに対する血管拡張反応が障害されていると考えられた。このような動脈硬化の早期発見や、高脂血症に対する薬物治療の効果判定にジピリダモ-ル負荷時の血流予備能測定が有用である可能性が示された。今後、糖尿病、高血圧に肥満、たばこなどの他の動脈硬化危険因子についても、動脈硬化の早期発見や薬物の治療効果を評価できることが期待される。
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