放射線抵抗性癌細胞の感受性を決定する放射線生物学的諸因子に関する研究

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06670906
• 研究機関: 東京医科歯科大学
• 研究代表者: 山田 一郎 東京医科歯科大学, 医学部, 助教授 (90182518)
• キーワード: 放射線抵抗性 / 癌細胞 / 放射線生物学 / メラノーマ細胞 / 放射線感受性 / PLD回復 / 細胞動態

研究概要

平成6年度までに、メラノーマ細胞における放射線抵抗性の機構を解明するため、ヒトおよびマウスのメラノーマ細胞の放射線感受性を検討し、以下の点を明らかにした。第一に、メラノーマ細胞の生存率曲線は低線量領域の肩部分が大きく、分割照射療法で用いられる線量に強い抵抗性を示した。第二に、メラノーマ細胞では放射線照射後に顕著なPLD回復が生じた。第三に、細胞周期では放射線抵抗性のS期細胞が相対的に多かった。第四に、L-dopaの前処置後に照射すると、sublethal damageに対するcapacityが有意に減少した。このような実験結果に基づいて、現在では悪性メラノーマの放射線抵抗性の機序を細胞動態、メラニン産生、
GSH代謝およびDNA修復という観点から検討している。
メラニン形成性メラノーマ細胞における放射線感受性の特徴は生存率曲線における低線量領域の肩部分が大きく、分割線量(2 Gy前後)に対して強い抵抗性を示すことであり、PLD回復を種々の条件下で検討した実験では顕著なPLD回復の発生が認められた。現在、同調培養法を用いて放射線感受性の細胞周期内変動と細胞周期各期細胞の生存率曲線を検討している。また、メラノーマ細胞のGSHレベルおよびGSH関連酵素活性を測定し、メラノーマ細胞におけるGSH代謝と放射線感受性との関係を追求している。更に、放射線照射後の不定期DNA合成(UDS)を検討し、DNA修復と放射線感受性との関係を追求中である。
このように平成6年度に計画した研究は順調に進行中であり、これらの諸因子を解明することによって悪性メラノーマに代表される放射線抵抗性癌の集学的治療に対して重要な示唆が得られるものと期待される。

研究成果

• [文献書誌] Ichiro Yamada: "Assessing moyamoya disease:comparative results of MR angiography and MR imaging versus conventional angiography as diagnostic tools" Radiology. (in press).
• [文献書誌] Ichiro Yamada: "Moyamoya disease:diagnostic accuracy of MR imaging" Neuroradiology. (in press).
• [文献書誌] Ichiro Yamada: "Takayasu arteritis:evaluation with MR imaging" Radiology. 188. 89-94 (1993)
• [文献書誌] Ichiro Yamada: "Moyamoya disease:diagnosis with three-dimensional time-of-flight MR angiography" Radiology. 184. 773-778 (1992)
• [文献書誌] Ichiro Yamada: "The killing effect of 4-S-cysteaminylphenol,a newly synthesised melanin precursor,on B16 melanoma cell lines" Br.J.Cancer. 63. 187-190 (1991)
• [文献書誌] Ichiro Yamada: "The effect of L-dopa on the potentiation of radiation damage to human melanoma cells" Br.J.Cancer. 62. 33-36 (1990)
• [文献書誌] Ichiro Yamada: "Year Book of Rheumatology" Sergent,J.S.,ed.,Mosby Inc.,Chicago(in press),
• [文献書誌] 山田一郎: "全身のMRI" 多田信平編集、金原出版、東京, 340 (1992)