平成6〜7年度までに、メラノーマ細胞における放射線抵抗性の機構を解明するため、ヒトおよびマウスのメラノーマ細胞の放射線感受性を検討し、以下の点を明らかにした。第一に、メラノーマ細胞の生存率曲線は低線量領域の肩部分が大きく、分割照射療法で用いられる線量に強い抵抗性を示した。第二に、メラノーマ細胞では放射線照射後に顕著なPLD回復が生じた。第三に、細胞周期では放射線抵抗性のS期細胞が相対的に多かった。第四に、L-dopaの前処置後に照射すると、sublethal damageに対するcapacityが有意に減少した。このような実験結果に基づいて、現在では悪性メラノーマの放射線抵抗性の機序を、細胞勤態、メラニン産生、GSH代謝およびDNA修復という観点から引き続き検討している。 メラニン形成性メラノーマ細胞における放射線感受性の特徴は生存率曲線における低線量領域の肩部分が大きく分割線量(2Gy前後)に対して強い抵抗性を示すことであり、PLD回復を種々の条件下で検討した実験では顕著なPLD回復の発生が認められた。現在、同調培養法を用いて放射線感受性の細胞周期内変勤と細胞周期各期細胞の生存率曲線を検討している。また、メラノーマ細胞のGSHレベルおよびGSH関連酵素活性を測定し、メラノーマ細胞におけるGSH代謝と放射線感受性との関係を検討している。更に、放射線照射後の不定期DNA合成(UDS)を検討し、DNA修復と放射線感受性との関係を追求中である。 このように平成6〜7年度に計画した研究は順調に進行中であり、これらの諸因子を解明することによって悪性メラノーマに代表される放射線抵抗性癌の集学的治療に対して重要な示唆が得られるものと期待される。
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