研究概要 |
【目的】single photon emission computed tomography(SPECT)によってドーパミンD2受容体をイメージングするために、新しい放射性リガンドI-125 NCQ298を合成し、小動物(ラット)を用いて動態解析などの基礎的検討を行った。 【対象】雄成熟ラット(Sprangue-Dawley rat:体重約200g,N=20)を用いた。【方法】まず、クロラミンT法を用いて、NCQ298の前駆物質にI-125を標識した。収率98%であった。次に、ラットをハロセン麻酔下に開腹し、大腿静脈ヘカテーテルを挿入して血管を確保した。麻酔が完全に覚醒してから、I-125I NCQ298 100μCi(=0.3ml)を静注した。静注5分、10分、15分、30分、60分の時点で断頭(各4匹)し、速やかに全脳を摘出して、全頭皮質、綿条体、海馬、小脳の4つに分離した。その際できるだけ血管成分を除去し、試料に混入しないようにした。断頭直後に頚部断端から採血した。各試料の重量を計測後、well counterで放射能を計測し、count/mgを測定した。また血中の放射能count/mlを測定した。以上のデータを用いて3-コンパートメントモデル解析を行った。 【結果】前頭皮質、海馬、小脳の放射能は、約10分でプラトーに達して漸減した(図)。一方、綿条体の放射能は速やかに上昇して、約15分でプラトーに達し、その後60分まで平衡状態にあった。綿条体の放射能は、前頭皮質や小脳に比較して、約3倍であった。血中の放射能は10分でプラトーになり、その後漸減した。 【考察】I-125INCQは綿条体に著しく集積し、約15分で平衡状態に達する。一方、小脳や前頭皮質への集積は約1/3と少なく、コントラストが明瞭になった。I-125INCQは、ドーパミンD2をイメージングする放射性リガンドとしてきわめて有用であると考えられた。今後は、ヒト脳を対象にしてこの放射性リガンドの有用性を検討する予定である。
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