研究概要 |
わが国は高齢化を抑えて、今後老年性痴呆増加が大きな社会問題となることは避けられない。その一因をなすアルツハイマー病は原因が不明であり、現在脳核医学はその早期診断や経過観察に脳血流や脳代謝で貢献しているが、その結果をみているに過ぎない。一方、アルツハイマー病の記憶障害が脳内コリン系の機能低下に深く関与することが示唆されており、この病態を画像化できれば病気の早期発見、治療法の改善に大きく貢献するものと期待されている。 本研究の開始までに、アルツハイマー病モデルラットのムスカリン性アセチルコリン受容体タンパクのサブタイプであるm1,m2,m3のメッセンジャーRNAの局在をこれに相補的塩基配列を有するDNAを用いて検出するIn Situ ハイブリダイゼーション法により測定し、メッセンジャーRNAに変化がないことを確認しており、本研究ではさらに残りサブタイプであるm4,m5のメッセンジャーRNAを測定したが、m4,m5のメッセンジャーRNAにも変化はなかった。アルツハイマー病モデルの受容体RNAに関して低下するという報告と変化がないという報告があり、まだ結論は出ていない。 本研究は現在の形態学の極致ともいえる遺伝子発現に関与するメッセンジャーRNAの分布を動物モデルにおいて定量的オートラジオグラフィーによりとらえ、動的情報伝達機構の画像化を試みるもので、またこの研究の成果は現在臨床に用いられているPETやSPECTを用いての伝達機構の画像化の基礎となるものである。今後は血管性痴呆との比較のため、脳梗塞モデルラットでの同メッセンジャーRNA測定も必要であり、血管性痴呆との比較によりアルツハイマー病の病因にせまることが期待される。
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