胸膜に接した肺癌18例において、そのCT像と病理組織を検討した。その結果、病変が胸膜に広基性(>3cm)に接している場合、胸膜外脂肪層の消失、肋骨破壊が最も重要な所見と考えられた。肋骨破壊や胸壁に腫瘤を形成している場合は容易に診断できるが腫瘤が胸膜面と3cm以下で密に接しており胸膜外脂肪層が消失している場合、CTでは臓側胸膜と壁側胸膜との区別がつかないため診断が困難であった。脂肪層の消失の有無については10mm厚のCT像に比べ、3-1.5mm厚の高分解能CT像ではわずかな脂肪を検出できるため、病理像との一致率が高く高分解能CTの有用性が示唆された。一方、胸膜陥入像や胸膜肥厚像は胸壁浸潤の有無の評価には有用ではないと考えられた。実体顕微鏡下では腫瘍が胸膜面に達し胸膜表面の陥凹が見られる例でも病理組織上では胸膜には浸潤しておらず反応性と思われる間質の増生と炎症細胞の浸潤が認められるのみであった。高分解能CT上、陥凹部で見られた腫瘍から胸壁へ連続したsoft-tissue densityはそれに対応するものが標本では認められず、陥凹部と胸壁間に貯留した少量の胸水の可能性が高いと考えられた。高分解能CTは胸膜面の微細な変化が描出されるため、胸壁浸潤の有無の評価に有用な診断法と考えられた。
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