胸膜に接した肺癌23例において、そのCT像と病理組織を検討した。その結果、胸膜浸潤の有無を判定するのに有用と思われる画像所見は、1)病変が胸膜に広基性(>3cm)に接しているかどうか、2)肋骨破壊の有無、3)胸膜外脂肪層の消失の有無であった。1)または2)の所見が認められた例では全例病理像でも胸膜浸潤が確認された。しかし腫瘍が胸膜面と3cm以下で密に接し胸膜外脂肪層が消失している例では、臓側胸膜への浸潤の有無を正確に診断するのは困難であった。脂肪層の消失の有無については10mm厚のCT像に比べ、3-1.5mm厚の高分解能CT像ではわずかな脂肪を検出できるため、病理像との一致率が高く高分解能CTの有用性が示唆された。 一方、胸膜陥入像や胸膜肥厚像は胸膜浸潤の有無の評価には有用ではないと考えられた。実体顕微鏡下では腫瘍が胸膜面に達し胸膜表面の陥凹が見られる例でも病理組織上では胸膜には浸潤しておらず反応性と思われる間質の増生と炎症細胞の浸潤が認められるのみであった。高分解能CT上、陥凹部で見られた腫瘍から胸膜へ連続した軟部組織影はそれに対応するものが標本では認められず、陥凹部と胸壁間に貯留した少量の胸水の可能性が高いと考えられた。 高分解能CT像は病理像を正確に反映し胸膜面の微細な変化を捉えることが可能なため、胸膜浸潤の有無の評価に有用な診断法と考えられた。しかしCTのみでは診断が困難な症例の少なくなく、そのような例ではUSやMRI等とあわせた総合的な評価が必要と思われた。
|