1.実験的検討 前年度の研究によりステント直径と門脈圧低下度と密接な関係のあることが明らかとなったが、今年度の研究により経頸静脈的肝内門脈静脈短絡術のシャント径は肝内の門脈血流の検討から8mmが適切であるとの結果が得られた。 2.臨床的研究 実験的検討を踏まえて臨床例においても適切なシャント径について検討した。シャント径は8mm10mmの2種類を用いたが、その結果肝性脳症の発生頻度、肝機能に及ぼす影響、肝内の門脈血流量などの観点から8mm径が適切との結果を得た。しかし、シャントの開存性の観点からはシャント径の大きい10mmの方が長期開存が得られる傾向にあり、さらに検討の必要があると考えられた。一方、経頸静脈的肝内門脈静脈短絡術の適応については従来、欧米では内視鏡的硬化療法で止血困難な静脈瘤及び難治性腹水とされている現在本院では50症例に対して経頸静脈的肝内門脈静脈短絡術をおこなったが、適応については特に胃静脈瘤に対する有効性が示唆されており、また難治性腹水にも良い適応のあることが確認された。
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