研究概要 |
頸静脈的肝内門脈静脈短絡術は食道静脈瘤による吐血、下血や難治性腹水を引き起こす門脈圧亢進症に対する新しい治療法であるが、その適応と選択についての詳細な研究はほとんど見られないのが現状である。本法施行に当たり最も重要なことは短絡路と門脈圧減圧効果との関係を知ることであるが、これについての基礎的研究はほとんど見られない。本研究の目的は短絡路の直径と門脈圧減圧との関係を実験的に検討すること、および臨床的には手技の容易化と術後の変化やその管理について検討し、さらに肝癌合併例に対する適応などについて検討した。 実験的研究では実験動物を用いてRoschらの方法に準じて肝内に直径が6mm, 8mmおよび10mmの自作の金属ステントを挿入し門脈-肝静脈短絡路を作成した。その結果、短絡路直径と門脈圧減圧との間に相関関係のあることが明らかとなり、門脈像との比較により適切なステント直径は8mmであるとの結論を得たが、従来まったく報告がなく、新知見と考えられる。臨床研究は現在55症例が集積されたが、消化管出血例では%、難治性腹水例では%で本治療が奏功した。金属ステントは直径8mmおよび10mmの2種を用いたが、10mm径の使用例は門脈圧減圧が大で、治療効果も高く臨床例においてはより適切と考えられた。一方、肝癌合併例は15例あったが、本治療の適応は1.穿刺経路に腫瘍のないこと、2.腫瘍が他治療によりコントロールされていること、3.予後規定因子が門脈圧亢進症であることの3点が満たされた場合のみあると考えられた。
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