研究概要 |
本研究は悪性腫瘍、精神病・神経疾患、老年性痴呆・アルツハイマーなどの脳疾患を^<201>Tl SPECTで診断する時の基準を確立し、その標準化を図ることを目的とする。上記目的を達成するための方法論として、複数施設の複数医師の参加による読影実験を行うこととし、本年度はまず、58例の各種脳疾患患者の^<201>Tl-SPECT、MRI、CTからなる画像データベースを構築した。MRIはGd-DTPA造影前後の画像を収集し、さらに臨床所見データとして神経学的所見および確定診断の根拠となるデータとして、剖検、アンギオ、生検、臨床診断の情報も収集した。 読影実験は次のようにして行った。(1)核医学専門医9名が三角カメラ断層装置で撮像された脳疾患患者の^<201>Tl-SPECT像を読影した。(2)SPECTを全例読影後、MRIを追加してSPECT像を再読影する実験を行った。SPECT像は横断像、冠状断像、矢状断像の3種類、MRI像は横断像が用いられた。医師はそれらより異常所見を検出し、その解剖学的位置を判定すると共に、正常・良性・悪性などの質的診断も行った 各医師の読影結果は予め用意した読影レポート用紙に記録された。また実験後、症例提供者の医師と実験実施者である本研究代表者およびMRI診断専門医の3名が、神経学的所見、剖検、手術、CT,MRIおよび読影対象となったSPECT等、すべての情報を総合してゴールデンスタンダードとなる診断を確定した。 次に以下のようなデータ解析により^<201>Tl-SPECTの診断能を定量した。すなわち、症例ごとゴールデンスタンダードの診断と各医師の読影結果とを比較し、医師ごとおよび9名分の読影結果をプールした医師全体の、所見検出能、部位診断能および脳疾患鑑別診断能を表すROC曲線を求めた。 その結果、(1)医師全体の成績:(A)異常所見検出率:^<201>Tl-SPECT単独:84.1%、TL+MRI:94.4%、(B)悪性疾患診断的中率:^<201>Tl-SPECT単独:46%、Tl+SPECT:62.6%、(C)所見部位的中率:Tl+MRI:85%、(2)上記診断能の医師間変動はA<B<Cの順に大となった。 今後は、MRIまたはCT診断専門医がまずMRIまたはCT単独で診断後、^<201>Tl-SPECTを併用して診断する読影実験を行い、脳SPECTがMRI,CTの診断にどれだけ意味のある情報を追加できるかを明らかにする共にその時の診断能の医師間変動からSPECT診断のインパクトを定量する予定である。
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