本研究は、主として脳の悪性腫瘍診断に対するT1-201-SPECT(single photon emission computed tomoraphy)の診断基準を確立し、その標準化を図ることを目的とした。また、併せて読影実験における医師の間の変動についても検討を加えた。まず、54例の主として脳腫瘍患者のT1-201-SPECT、MRIからなる画像データベースを構築した。MRIはGd-DTPA造影前後の画像を収集し、さらに臨床所見データの神経学的所見および確定診断の根拠となるデータとして、培検、アンギオ、生検、臨床診断の情報も収集した。そして9人の核医学専門医が54例のT1-201-SPECTを読影する実験を行った。T1-201-SPECTは3検出型シンチカメラ装置で撮像した。最初の実験でT1-201-SPECTを読影し、引きつづきいて、MRIを追加して再度T1-201-SPECTを読影した。結論として、1)T1-201-SPECT単独による異常所見検出率は、84%(読影医9人の平均)であり、悪性鑑別能のtrue positive ratio(TPR)は、53%、false positive ratio(FPR)は、28%であった。一方、T1-201-SPECTとMRIを併読の場合には、異常所見検出率は94%、悪性診断能のTPRは74%、FPRは45%であった。異常所見検出率はMRIによって統計的に有意に増加した。しかし悪性鑑別能については有意差は見られなかった。 2)T1-201-SPECT単独による異常検出率の医師間変動は、T1-201-SPECTとMRI併読に比較し有意に大であった。しかし悪性鑑別能の医師間変動の差は有意ではなかった。3)本実験では、上記の結果から、MRIは異常所見の検出には有効であったが、悪性鑑別能についての有効性は示されなかった。
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