X線ビームを1次元的にし、1次元検出器と同時にスキャンする方式を高速化する方法を検討した。1次元ビームとしてベンディングマグネットや挿入光源ウイグラーから放出される放射光を用いた。1次元的な照射野から2次元X線画像を得る方法として2次元検出器の一部をスリット状にアクティブにしてこれをスキャンさせる方式を考えた。種々の組み合わせを検討した結果、2次元検出器としてIIとビデオカメラを組み合わせたものが高速化に適しており、実用化にも近いと考えられる。シャッター機構としてはX線ビームを検出器前面で1次元的に開閉しこれをスキャンする方法、IIの出力蛍光面のあとで光学的にシャッターを設けてこれをスキャンする方法が考えられる。またCCDの電子シャッターをライン状に配置し、スキャンしても原理的に同様な効果が期待できる。この方法により散乱線の影響を取り除き画像を取り込むことができる。またCCD面上でライン状電子シャッターを動作させる場合は高速に2次元画像を取り込むことができ、しかも患者を平行移動する必要はない。 一方米国でK吸収端差分環状動脈造影用に開発されている1次元スキャン法は患者をスキャンすることによりこの方法を実現している。この方法では約1秒おきの画像しか得られず、また患者を急速に平行移動させる必要がある。日本で開発されているII+TVによる従来の2次元検出器法では秒間15枚の画像が得られ、患者の移動は不必要であるが、散乱線の影響が大きく大きな結晶を振動させる必要がある。これまで固定して用いられてきた放射光ビーム自体をスキャンできる可能性が示唆されている。本研究では放射光ビームスキャンを想定して、両者の長所を取り入れ、短所を取り除くシステムの構成を検討した。K吸収端上下のエネルギーに相当する格子面を交互に帯状に配置した分光結晶を用い、この結晶上に放射光ビームをスキャンさせると、一回のスキャンで高速にK吸収端上下1組のX線像が形成される。この場合の結晶と被写体の距離が入力ビームの幅とK吸収端上下のエネルギー差に依存することを示し、実用に当たって妥当な距離の範囲にあることを示した。ビームの電子的なスキャンとCCDカメラの制作は現段階では技術的・経済的な制約があり実現できないので、模擬的な系で実験を行った。電子をスキャンさせるかわりに、単結晶モノクロメータの角度を変えることによりスキャンしまたCCDの特殊シャッター機能は画像処理の上で空間的なウインンドウを設けることで実現した。この結果、散乱線が抑制され、コントラストが著しく改善されることが示された。
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