肺癌患者のリンパ節転移より得たヒトモノクローナル抗肺癌抗体(HB4C5)の糖鎖を処理したdHB4C5(deglycosylated HB4C5)は、これまでの肺癌移植マウスを用いたin vivoの実験で、高い腫瘍集積性と特異性を示すことが判明している。このdHB4C5を肺癌の画像診断薬とし応用する前段階として、イメージングに適した放射性核種、^<111>In-DTPAによる標識を試みた。^<111>In-DTPA標識 dHB4C5はコントロールとしたヒトIgMに比しマウスの移植腫瘍に高い集積を呈し、^<111>In標識抗体の活性は保たれていた。しかし^<111>In-DTPAにて標識した抗体の体内分布は、正常の肝臓、腎臓、そして脾臓でかなり高く、臨床応用する上でも読影範囲が制限されると考えられた。またコントロールとして用いたヒトIgM抗体、そしてdHB4C5共、キレート剤であるDTPAを介した^<111>Inとの標識率が低く、さらに標識抗体とカラムとの吸着率も高いために、50%以上の収率は得られなかった。 これまでの報告を含めて検討した結果、IgM抗体ではIgGに比し^<111>In-DTPAとの標識率が低く、種々の工夫を加えても臨床的にイメージを行うに十分な収率を得ることは困難と判断された。そこで平行して、遺伝子組換えの技術を導入し、IgMのFc部分を操作してC5-L鎖型抗体(C5λ鎖他)を作成した。抗体活性や腫瘍集積性、そして抗体特異性について肺癌移植マウスを用いて調べた結果、C5λ鎖の腫瘍集積性は従来の抗体の結果よりやや劣るものの、腎臓への集積が少なく、抗体活性は保たれていることが判明した。さらに種々の工夫を加え、ヒト型抗肺癌抗体(d HB4C5)の画像診断に適した型への組換えと放射性アイソトープによる標識を試みている。
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