研究概要 |
臨床的に軟部組織より発生したと思われた腫瘤性病変105例(通算)に対してMRI検査を施行した.造影MRI, Dynamic MRIはほぼ全例に施行可能であった.手術あるいは生検が施行され,病理組織診断が得られたものは82例で,手術施行例のうち10例においては,MRI像と病理像との詳細な対比検討を行った. Dynamic MRI所見も加えたMRI像は,肉眼病理像を比較的よく反映していた.それにより.腫瘤内の脂肪成分,脂肪変成,嚢胞成分,液化壊死,粘液腫様成分,硝子軟骨性成分,膠原線維性成分,出血,出血壊死,凝固壊死,おから状成分,vascularityなどの推察が可能となり,これらの構成成分とその分布から,臨床上鑑別にあげられる疾患をさらにしぼりこむことができた. 疾患別の検討としては,前年度から引続いているmalignant fibrous histiocytomaについての亜型別,局在別検討,粘液型を主体とした脂肪肉腫の検討などを行い,疾患にある程度特徴のある所見を認めることができた. 良悪性の鑑別については,典型的所見を呈する過半数の例では比較的容易に鑑別可能であったが,良性と低悪性度の腫瘍との鑑別や悪性と活動性の炎症性腫瘤との鑑別においては,パターンにオーバーラップが多く,MRI診断の限界が示唆された.今後,MR spectroscopyやMIなど他の検査法との併用が必要かもしれない. 治療効果判定には,Dynamic MRIのパターンの変化も一指標となり得たが,一部の症例でvascularityの増加を再発と誤診したものもあり,今後の研究課題と思われた.
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