研究概要 |
今年度にMRI検査を施行した軟部腫瘍性病変55例について,前年度までの研究成果を基にしてprospectiveにMRIの診断能を検討した.Dynamic MRII所見を加えたMRI像による内部成分の推察はほとんどの症例でほぼ可能であった.ただし量的に少ない成分については指摘できない例があり,現段階のMRIの限界と思われ,さらに高分解能の撮像法が必要と思われた.質的診断については,内部成分の構成とその分布およびに臨床情報からあげた上位3つの鑑別診断にほとんどの症例で合致しており,鑑別診断を絞り込むという当初の目的は達成されたと判断した.上位3つの鑑別診断に含まれなかった症例は,極めてまれな例(腫瘍自体,発生部位,発生年齢),炎症などの付随した変化が強い例であった.疾患別の検討としては,症例の積み重ねにより,特に頻度が高い脂肪性腫瘍,血管性腫瘍,末梢神経腫瘍,粘液基質性腫瘍の鑑別能の向上がみられた.良悪性の鑑別については,典型的所見を呈する約7割の例では鑑別可能であったが,Dynamic MRIのみでは例外も多く良性と低悪性度の腫瘍との鑑別や悪性と活動性の炎症性腫瘤との鑑別が困難であり,MRI診断の限界が示唆された.治料効果判定には,sizeや内部性状の変化Dynamic MRIのパターンの変化を加えることで,より正確な判定が可能となった.しかし,一部の症例でvascularityの増加を再発と誤診したものもあり,今後の研究課題と思われた. また今年度から造影剤を用い経時的に3-4回繰り返し行う3D MD Angiographyを使用し,小病変の発見,関与血管の検索,経時的造影経過の視覚的認識などに有用性が認められ,新しい診断手技として今後発達する可能性が示唆された.
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