(1)X線治療を行った子宮頚癌患者の照射前の生検組織材料を用いて癌遺伝子C-erbB-2蛋白やP53蛋白の腫瘍発現と細胞増殖関連因子Growth Fraction、pMIとの関連や照射効果ならびに予後の相関について研究した。この結果、癌遺伝子C-erbB-2蛋白を発現する子宮頚癌はGrowth Fractionが低く、pMIが高いことが明らかとなった。これによりこの遺伝が発現する腫瘍は細胞回転が早く、細胞増殖が旺盛な一方で、休止期の細胞集団を多く含んでいることが示唆された。さらに予後解析によると、c-erbB-2癌遺伝子産物の発現陽性例の5年生存率は48.5%で、陰性例の68.7%に対し有意に予後不良であった。この遺伝子の発現する腫瘍患者は局所制御率と生存率が対照患者に比べ有意に低いことが明らかとなった。 (2)APOPTOSIS関連抗原Le^Y抗原の発現や癌遺伝子c-erbB-2の発現と子宮頚癌の放射線治療について研究した。さらに照射初期の発現についても検討した。[対象と方法]1975年から1980年の間に放医研で放射線治療された子宮頚癌扁平上皮癌3期症例193例と最近の22症例の組織を検討した。[結果]Le^Y抗原の陽性率は70.5%で、強陽性が36.3%であった。陽性率は年齢や腫瘍の大きさには相関が無かったが、組織亜型では角化型に強陽性率が低い傾向が認められた。5年ならびに10年累積生存率はLe^Y強陽性例がそれぞれ52.5%、52.5%で、陰性-弱陽性例は70.5%、65.8%であり、強陽性例は有意に予後不良であった。転帰解析からみると、強陽性例は局所制御と遠隔転移の両法において不良であった。多変量解析によりLe^Yとc-erbB-2産物は独立した予後因子であることが明らかとなった。さらに、これらは腫瘍の大きさとも独立した予後因子であった。照射によりLe^Y抗原の発現が強くなり照射27Gyでは大部分の残存腫瘍細胞はLe^Y抗原が強陽性となった。またLe^Y抗原が強度の腫瘍は初期照射効果が良好なものが多かった。しかし、遠隔成績とは逆の関係であった。
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