研究概要 |
1.インフォームドコンセントの得られた精神分裂病患者2症例からそれぞれ採取した脳脊髄液を神経芽腫細胞株RT-BM-1の培養液に添加し、継代培養を行う一方、無添加の細胞株をコントロールとした。それぞれの培養細胞の増殖能に関して、倍加時間、最高増殖密度を算定し、比較を行ったところ、分裂病髄液添加細胞とコントロールに有意差は認められなかった。神経分化能に関して、レチノイン酸処理を行った後2週間、位相差顕微鏡下での継時的観察と神経細胞の樹状突起に特異的に分布するMAP2に対するモノクローナル抗体を用いたWestern blottingを行ったが、分裂病髄液添加細胞とコントロールの分化能に差は検出されなかった。精神分裂病患者2症例と少ない症例数だが、我々が本研究に用いた神経分化能を有する培養神経芽腫細胞RT-BM-1は、Shirabeらが報告したグリア系細胞株SK-N-SH(EP)とは異なり、分裂病の髄液の持つ細胞増殖に対する効果が認められなかった。 2.このような結果から、我々は今後の研究の展開として、分裂病患者の脳脊髄液を用いた研究から、分裂病の実験モデルへの変更を考慮した。実験モデルとして、Phencyclidine(PCP)投与動物および投与培養細胞の使用を計画している。近年、中枢神経系における情報伝達時に急激に増加する遺伝子として、immediate early genes(c-fos,c-jun,jun-B and zif/268)が注目されている。我々は、今後の研究の展開のために、immediate early genesの可能性が示唆されているマウスmxi1遺伝子のクローニングを行った(E.Shimizu et al.1995)。今後、PCP投与によって発現の変化が導かれる遺伝子について検討していきたい。
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