研究概要 |
内嗅領皮質両側破壊ラットにセロトニン2受容体作動薬である1-(2,5-dimethoxy-4-iodophenyl)-2-aminopropane hydrochloride(1mg/kg,sc)を投与し、首振り運動を計測したところ、偽手術群と比較して有意に増加していた。このように、内嗅領皮質両側破壊ラットにおいてセロトニン関連行動の増強がみられたことは、内嗅領皮質と解剖学的に関連のある海馬などの脳領域で、セロトニン-2受容体を介した機能が変化を受けることを示唆している。 慢性分裂病の死後脳の大脳皮質、海馬や線条体など20部位で、高速液体クロマトグラフィー法を用いて、グリシンおよびその前駆物質であるセリンやスレオニンの脳内含量を測定した。このうち、orbitofrontal cortexにおいてグリシン含量が有意に増加しており、死亡前40日間抗精神病薬を服用していなかったoff-drug群においても増加しており、またセリン含量も同様に増加傾向が認められた。これまでに、Waziriらは分裂病死後脳の側頭葉(Broadmann area(BA)34)において、グリシンならびにセリン含量の増加とグリシンとセリンの相互間の代謝をおこなうセリン水酸化メチル転移酵素のKm値の増大を報告しており、本研究においてもorbitofrontal cortex(BA 45&47)におけるこの両者間の代謝の異常を示唆する知見が得られた。 ラットにPCP(7.5mg/kg,i.p.)を単回ないし連続14日間投与して、[^<125>I]iomazenilを標識化合物に用いてオートラジオグラフィー法受容体結合実験を行い、脳内の中枢型ベンゾジアゼピン受容体数の変化を調べた。頭頂葉浅層では、単回および反復投与群において、有意に増加していた。海馬では、CA1において、反復投与群で有意に増加しており、梨状葉皮質では、反復投与群で有意な減少がみられた。PCPが強力なNMDAの拮抗薬であることから、今回中枢型ベンゾジアゼピン受容体数の変化がみられた脳領域では、NMDA受容体と中枢型ベンゾジアゼピン受容体との間に相互作用があることが示唆された。
|