三重県の産科及び小児科を標榜するS病院の後期の母親学級を受講した1208名の妊産婦を対象として、妊娠後期、産後1カ月後、産後3カ月、産後4カ月、産後1年後の各時期に平成6年度に作成した調査票(特性不安尺度、状態不安尺度、エジンバラ産後うつ病調査票など)を配布して、妊娠期から産後1年までの妊産婦の心理的変化、産後うつ病のスクリーニング、産後うつ病と産科的要因(分娩様式、経産回数、出産時体重、性別など)、社会心理的背景(病前性格、世帯構成、住居環境、産後の支援体制)、母子関係(愛着など)を追跡し、日本における産後うつ病のリスクファクターを推測するため縦断調査を行った。 その結果、現在までの中間解析では、産後うつ病の出現頻度は産後1カ月で18.3%、産後3カ月で11.9%、産後4カ月で7.2%となった。そして、産後4カ月までのデータの集計では産後うつ病のリスクファクターとして「初産婦」、「早産」、「ライフイベント」、「育児上の心配」が有意な関連(x2検定)がみられた。また、特性不安尺度(STAIT)高得点の妊婦では、産後のEPDS、STAISの得点が高得点群であることがわかった。「STAITの高得点」、「産後1カ月の育児上の心配」、「初産婦」、「ライフイベント」がEPDSスコア、STAISスコアと相関(数量化理論II類)が高いことが判明した。 乳幼児の発育、神経発達的なデータの集積はほぼ終了し、産後の精神状態が乳幼児の心理的な発達に及ぼす影響を解析して母子関係におけるリスクファクターを検討し、平成8年度に印刷出版する。 ケンブリッジ大学のワークショップ(WHO協力)で提案された研究方法を進展させた最終プロトコールに対する日本の産後うつ病に関するデータなどを送付した。
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