三重県のS産婦人科医院を受診した妊産婦1208名(以下、クリニック群)ならびにS町保健センターが妊婦訪問した200名(以下、センター群)を対象として妊娠期から産後1年までの妊産婦の精神心理状態の変化、産後うつ病のスクリーニング、産後のうつ傾向と産科的要因や社会心理的要因との関係、さらに母親の精神心理状態が児の精神・身体発達へ及ぼす影響について検討した。調査には特性不安尺度、状態不安尺度、エジンバラ産後うつ病調査票(EPDS)等を含む調査票を用いた。クリニック群においては、妊婦後期母親学級、産後1カ月および4カ月時点での来院時に、産後3カ月および1年の時点には郵送で調査票の配布・回収を行った。センター群では、妊婦訪問時、産後1カ月、3カ月、4カ月の各時期には郵送で、産後1年時点では健康相談時に調査を実施した。その結果、エジンバラ産後うつ病調査票によるスクリーニング(カットオフポイント;8/9)では産後1カ月、3カ月、4カ月および1年時点での有病率は、クリニック群で18.3%、11.9%、7.2%および12.2%であり、センター群では20.5%、17.1%、15.0%および16.1%であった。すなわち、産後うつ病の疑いのある者が産後1カ月時点では5人にひとりであったものが、次第に減少し4カ月時点では10人にひとり程度になった。しかし、産後1年を経過してもそれ以上には改善されず、むしろ増加傾向を示した。児への影響については、簡易発達スクリーニング検査により1歳時点で調査した。その結果、EPDS得点と発達検査結果との間には弱いながらも有意な関連性がみられ、EPDS得点の高い母親の児の発達が遅い傾向にあった。また、児に対する母性的感情と不安尺度あるいはEPDS得点との間には有意な関連がみられ、不安傾向やうつ傾向のある母親では母性的感情が弱い傾向がみられた
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