研究概要 |
抗精神病薬は様々な精神疾患に有効であるが、代表的な抗精神病薬であるハロペリドールには、ドーパミンレセプター遮断作用があり、幻覚や妄想に対して効果がある反面、副作用として錐体外路症状などがあることが知られている。ところが現在、このような抗精神病薬の薬理効果の発現メカニズムはほとんど解明されていない。私達は過去、ラット前脳ニューロンに対する抗精神病薬の影響について調べた結果、ハロペリドールやクロザピンなど異なる抗精神病薬間で、標的ニューロンの分布に差があることを認めた。今回、私達はラットやニホンサルの前脳で、c-fosなどの前早期遺伝子の発現に対するさまざまな抗精神病剤の影響を調べ、抗精神病薬の中枢作用の影響下にあるニューロン群の同定を試みた。 平成6年度には、抗精神病薬の作用機序に関与するニューロン系を知るために、Fos免疫組織化学的方法を用い、3種類の抗精神病薬の効果を検討した。つまり、定型的抗精神病薬であるハロペリドール(0.5-1.0mg/kg)、ネモナプリド(0.05-0.5mg/kg)や非定的型抗精神病薬のクロザピン(25mg/kg)をラットやニホンザルに投与し、動物の大脳皮質、辺縁系、尾状核被殻、間脳などにおけるc-fos発現の相違を調べた。その結果、3種類の抗精神病薬の間で、Fos免疫陽性細胞の分布に違いがあることが証明された。とくにドーパミン神経支配が豊富な辺縁系領域、たとえばbasal forebrain、扁桃体諸核、基底核などで顕著な分布の差異が認められた(佐藤、Fibiger,1994;Ikemoto et al.,in press;Satoh et.al.投稿中)。今後、薬理作用の異なる各種抗精神病薬の中枢作用機序を詳しく検討したい。
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