研究概要 |
本研究は、三環系抗うつ薬(クロミプラミン、アミトリプチリン、デシプラミン)およびその代謝物血中濃度に関するデータに収集とその解析、これらの薬物代謝に関与する酵素のプローブドラッグの代謝解析を行って、難治性うつ病の生物学的要因を解明することを目的としている。平成7年度に得られたアミトリプチリンの代謝に関するデータ(Shimoda et al,J Clin Psychopharmacol,15:175-181,1995)を利用し、amitriptylineにて治療中の49名のうつ病患者でATおよびその代謝物血中濃度と臨床効果との関連について判別分析した。全体の73%の症例の臨床効果が判別分析によって導出された判別式によって正しく予想でき、amitriptyline,Z-hydroxyamitriptyline、Z-hydroxynortriptylineの血中濃度が上昇すればするほど、またnortriptyline、E-hydroxyamitriptyline、E-hydroxynortriptylineの血中濃度が低下すればするほど良好な臨床効果が得られることが示唆された(下田ら、臨床精神医学、1997)。また、本研究では三環系抗うつ薬の代謝の人種差を検討するために、clomipramineを経口服用している日本人およびスウェーデン人患者について、親化合物ならびにそれらの脱メチル化代謝物、すなわちdesmethylclomipramineの血中濃度の人種差について分析したが、その結果、日本人のclomipramineのクリアランスの平均は21.6L/h、スウェーデン人ではベンゾジアゼピン併用群で52.4L/h、clomipramine単独投与群で73.4L/hと大きな人種差が認められた。
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