研究概要 |
本研究は、三環系抗うつ薬およびその代謝物血中濃度に関するデータに収集とその解析、これらの薬物代謝に関与する酵素のプローブドラッグの代謝解析を行って、難治性うつ病の生物学的要因を解明することを目的としている。まず、研究対象となるTCAにamitriptylineを選び、先ずamitriptylineにて治療中の73名におけるamitriptylineの酸化能について検討した。その結果、amitriptylineおよびその代謝物であるcis-10-hydroxyamitriptyline, trans-10-hydroxynortriptyline, cis-10-hydroxynortriptyline, trans-10-hydroxynortriptyline, nortriptylineの血中濃度はamitriptylineの体重当たり投与量強い相関を示したが、大きな個体差が認められた。また、水酸化率および脱メチル化率、それぞれの値に約8倍、19倍の個体差が認められた。このデータを用いて、ATにて治療中の49名のうつ病患者でATおよびその代謝物血中濃度と臨床効果との関連について判別分析した。全体の73%の症例の臨床効果が判別分析によって導出された判別式によって正しく予測でき、AT、ZHAT、ZHNTの血中濃度が上昇すればするるほど、また、NT、EHAT、EHNTの血中濃度が低下すればするほど良好な臨床効果が得られることが示唆された。また、本研究では三環系抗うつ薬の代謝の人種差を検討するために、clomipramineを経口服用している日本人およびスウェーデン人患者について、親化合物ならびにそれらの脱メチル化代謝物の血中濃度の人種差について分析したが、その結果、日本人のclomipramineのクリアランスの平均はスウェーデン人の半分以下であった。
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