研究概要 |
1.対象薬となる抗うつ薬としてduloxetineを選択し、正常被検者8人を用い血小板セロトニン(5HT)取り込み機構に対する効果を検討した。 2.Duloxetine 20mgを朝1回、連続7日間服用後のin vitroの3H-5HT取り込み阻害パターンは競合阻害のまま変わりはなかった。 3.同様に、連続7日間服用の前後で、in vitroにおける3H-5HT取り込み阻害、3H-paroxetin結合阻害のKm,Vmax値に変化はみられなかった。 4.Duloxetine服用中のex vivoにおける3H-5HT取り込み阻害能は、duloxetineの血中濃度より推定される値より、常に数倍の高値を示していた。 5.洗浄血小板浮遊液を用い、in vitroの3H-5HT取り込み阻害能に対する薬物洗浄の効果を補助実験として行ったが、duloxetine,paroxetineについてはその効果は認められなかったが、trazodoneでは認められた。 6.Duloxetine 20mg連続7日間服用では、血小板膜上の5HT取り込み部位の変化はおこらないと考えられる。 7.Ex vivoにおける5HT取り込み阻害能の持続的高値は、duloxetineの血中濃度が低下した後もその薬理効果が持続するためと考えられる。 8.5HT取り込み部位に対する親和性の高いduloxetine,paroxetineでは薬物洗浄の効果はなく、親和性の低いtrazodoneでは効果があったことから、親和性の高い薬物ほど5HT取り込み部位に対する結合が持続しやすいことが示唆される。 9.抗うつ薬の用法、用量を決定する際には、薬物動態だけでなく、標的作用部位への親和性も考慮に入れる必要があると考えられる。
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