研究概要 |
Pericak・Vanceら(1991)は、晩期発症型アルツハイマー病が、第19番染色体長腕と連鎖することを報告し、またSchellenberg(1992)らは19番染色体上のAPOC-IIとアルツハイマー病の連鎖解析を行い、晩期発症家族性アルツハイマー病との間には弱い連鎖が認められると報告した。APOC-II遺伝子は第3イントロンに40bpの繰り返しが6回と7回見られ、この配列回数に多型性が認められる。我々はこの多型を用いて、晩期発症型弧発例アルツハイマー病患者とAPOC-IIとの相関を検討したので報告する。対象は、NINCDS-ADRDAの診断基準を用いてprobable Alzheimer's diseaseと診断された晩期発症型弧発例のアルツハイマー病患者33例及び対照群92例である。これらの対象から末梢血20ccを採血し、フェノール法によりDNAを抽出した。さらに特異的プライマーを用いて、APOC-II遺伝子の第3イントロンをPCR法により増幅した。このようにして得られたPCR生成物を、アガロースゲルで電気泳動した後、エチジウムブロマイドで染色しバンドの同定を行った。第3イントロンには多型が存在し、375bp(1),335bp(2)の2本のバンドが同定できる。375bpのバンドを1とし、335bpのバンドを2とした。遺伝子型の結果は、晩期発症型アルツハイマー病の患者群では、1-1が0名、1-2が20名、2-2が13名であるのに対し、対照群では、1-1が0名、1-2が33名、2-2が59名であった。遺伝子型1-1,1-2に有意差を認めた。遺伝子頻度の結果はアルツハイマー病群では1の遺伝子頻度は0.303,2の遺伝子頻度は0.697であった。対照群では1の遺伝子頻度は0.179,2の遺伝子頻度は0.821であった。両群間で1の遺伝子頻度に有意差があった。APOC-II遺伝子と晩期発症型アルツハイマー病との間に相関が認められたことにより、晩期発症型アルツハイマー病の発症に、APOC-II遺伝子が関与している可能性が示唆された。
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