本研究は季節性感情障害の長期経過・予後と特異的な生物学的マーカーを検索することにより、本障害の実態を明かにし、独立疾患か否かを解明する一助とすることを目的としている。1988年から1993年の間に同定された約200名の季節性感情障害のうち95例について検討した。46例(48%)が初診後3年以上フォローされており、この群で長期経過の検討が可能であった。経過型と類型化した結果、季節性が保持されていた群(44例)、寛解した群(13例)、秋冬のみならず夏まで遷延した群(11例)、季節性を喪失してしまった群(6例)と4つの群に分類が可能であった。季節性が変化する要因としては抗うつ剤を使用したこと、および光療法を行ったことなどが指摘された。過食、過眠、体重増加などの非定型症状の出現頻度は諸外国に比べて比較的低率であった。炭水化物渇望は女性に多く見られた。わが国の季節性感情障害患者にも2500-3000ルックスの高照度光照射療法が有効であった。この光療法の有効性は季節性が保持されていた群では、うつ病が遷延した群に比較すると高かった。治療前の炭水化物渇望の存在が光療法への反応性をある程度予測することが示唆された。本研究の結果は季節性感情障害が独立した疾患であることを示唆したが、今後症例を重ねて検討する必要がある。 一方、生物学的指標を特定する試みでは、季節性を保持している患者11例についてHLAのクラスIIのタイピングを予備的に行った。しかしながら、季節性感情障害に特に高頻度あるいは低頻度に出現する表現型は認められなかった。これについても症例を増やして検討する必要がある。
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