本年度は季節性感情障害に関する多施設共同研究の最終年度とした。これまでに集められた集計を整理し、更に新たに加わったものを併せて最終のまとめとした。その結果、協力医師が回答を寄せたものは全てで128例となった。そのうち経過観察期間を通じて季節性が保たれたものと、比較的季節性が保たれるものの一時期それが乱れるg k らに季節性の持続が消失するものの3群にわかれこれまでの報告を確認するものであった。光療療の効果についてもこれまでの所見とほぼ一致するものであった。 本年度新たな試みとして生物学的マーカーの研究を行った。生物学的マーカーの一つとして薬物反応性を調べたが、抗不安薬アルプラゾラムを用い、7名の患者(男性2例、女性5例)についてその有効性を検討した。7例中4例に中等度以上の改善が認められた。治療前の症状では活動性の低下、社会的ひきこもり、抑うつ気分、不安感、遅帯が主な症状であった。非定型症状を認めたのは半数以下であった。アルプラゾラムの投与は抑うつ、不安感に最も効果が認められ、活動性の低下、社会的ひきこもり、罪責感、過眠、体重増加、一般的身体症状、離人感なども改善された。今回の研究結果からアルプラゾラムに反応する群と反応しない群が存在することが示唆された。症例を増やし、両群を比較することにより、季節性感情障害の背景がより明らかになることと思われる。 さらに本年度はリズム障害という観点から睡眠・覚醒リズム障害と季節感情障害の比較研究を開始した。前者は男性が女性より多く認められたが、後者は圧倒的に女性が多かった。季節性感情障害患者の一部には睡眠・覚醒リズム障害を併発するものがあった。また、睡眠・覚醒リズム障害の程度が季節により変動する症例が認められた。さらに、睡眠・覚醒リズム障害に関して終夜ポリソムノグラムを行い、睡眠の質自体に異常が認められないことを確認した。
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