季節性感情障害患者をマスメディアを通じてリクルートし、多施設共同研究を行った。128例の登録患者を対象にその長期経過型から9つのサブタイトルに分けることが可能であった。このうち一型は途中で診断変更を行った4例の患者群であった。季節性が完全に保たれていたものは56例(44%)であり、その約70%に光療法が有効であった。これは季節性が乏しい群の有効率約40%に比較し、有意に高かった。経過中に季節性が消失する理由は不明であるが抗うつ薬の使用がそのきっかけとしてて認められたものが10例あった。また、炭酸リチウムと光療法によって再発が防止されているとみられる例が2例あった。光療法を行った46例の患者のうち、その効果は未治療時に炭水化物渇望が認められたものに有意に高く認められた。また、過眠も多く認められた。したがって、これらの治療前の症状が、光療法の良好な反応を予測する指標となることが示唆された。 生物学的マーカーの一つとして薬物反応性を調べる目的で、抗不安薬アルプラゾラムのを用い、7名の患者(男性2例、女性5例)についてその有効性を検討した。7例中4例に中等度以上の改善が認められた。治療前の症状では活動性の低下、社会的ひきこもり、抑うつ気分、不安感、遅滞が主な症状であった。非定型症状を認めたのは半数以下であった。アルプラゾラムの投与は抑うつ、不安感に最も効果が認められ、活動性の低下、社会的ひきこもり、罪責感、過眠、体重増加、一般的身体症状、離人感なども改善された。今回の研究結果からアルプラゾラムに反応する群と反応しない群が存在することが示唆された。症例を増やし、両軍を比較することにより、季節性感情障害の背景がより明らかになることと思われる。 リズム障害という観点から睡眠・覚醒リズム障害と季節性感情障害の比較を行った。前者は男性が女性より多く認められたが、後者は圧倒的に女性が多かった。季節性感情障害患者の一部には睡眠・覚醒リズム障害を併発するものがあった。また、睡眠・覚醒リズム障害の程度が季節により変動する症例が認められた。
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