うつ病の病態と治療に関する発達薬理学的研究:視床下部-下垂体-副腎皮質系機能の脱抑制動物モデルによる検討

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06670994
• 研究機関: 群馬大学
• 研究代表者: 三國 雅彦 群馬大学, 医学部・神経精神医学講座, 助教授 (00125353)
• 研究分担者: 飯島 幸生 群馬大学, 医学部・神経精神医学講座, 助手 (60251104) ; 井田 逸朗 群馬大学, 医学部・神経精神医学講座, 助手 (50251103)
• キーワード: 胎生期ストレス / ストレス脆弱性 / 強制水泳試験 / グルココルチコイド受容体 / 最初期遺伝子 / コルチコトロピン遊離促進ホルモン遺伝子

研究概要

発達期の生育環境刺激は神経系の発達に伴う可塑的変化を生じ、成熟後のストレス性刺激に対する反応性の個体差を形成するとともに、感情障害やストレス関連疾患の発症脆弱性と関連する可能性が考えられる。われわれは、妊娠母体に生理的食塩水を反復皮下投与した雄性仔ラットが、成熟後の恐怖条件付けストレス負荷に対するコルチコステロン分泌の亢進を示すことを明らかにし、うつ病での視床下部-下垂体-副腎皮質系機能亢進と類似したモデルであることを見いだした。この雄性仔ラットの成熟後のストレス負荷に対する行動学的変化の有無を検討したが、この雄性ラットは高架式プラス迷路試験での迷路への進入頻度の低下所見から不安が惹起されやすいと考えられ、しかも、強制水泳ストレス負荷時の無動時間の有意な延長所見からうつ病態モデルとなる可能性がさらに示唆された。
一方、同腹の雌性仔ラットは、恐怖条件付けストレス負荷から回復後のコルチコステロン分泌の基礎レベルへの戻りが対照群より早く、雄性仔ラットと逆の結果となり、胎生期生理的食塩水注射ストレスの効果に性差があることが明らかになった。これらの動物モデルと対照群の脳内におけるストレス誘発性の最初期遺伝子やコルチコトロピン遊離促進ホルモン遺伝子の発現パターンの解析をインサイチューハイブリダイゼイション法により開始した。
また、ラット脾臓由来のリンパ球やヒト末梢血リンパ球をヘトヘモアグルチニンで幼弱化して培養し、グルココルチコイド受容体を介する抑制能の測定の準備を行った。

研究成果

• [文献書誌] Tetsuo Ogawa,Masahiko Mikuni,: "Periodic matemal deprivation alters stress response in adult offspring:Potentiates the negative feedback regulation of restraint stress-induced adrenocortical response and reduces the frequencies of open field-induced behaviors." Pharmacology,Biochemistry & Behavior. 49. 961-967 (1994)
• [文献書誌] Katsumasa Muneoka,: "Periodic matermal deprivation-induced potentiation of negative feedback sensitivity to glucocorticoids to inhibit stress-induced adrenocortical response persists throughout the animal's life-span." Neuroscience Letters. 168. 89-92 (1994)
• [文献書誌] Tetsuo Ogawa,Masahiko Mikuni,: "Effects of the altered serotonergic signalling by neonatal treatment with 5,7-dihydroxytryptamine,ritanserin or clomipramine on the adrenocortical stress response and the glucocorticoid receptor binding in the hippocampus in adult rats." J.Neural Transmission. 96. 113-123 (1994)
• [文献書誌] Hideto Shinno,Masahiko Mikuni,: "Metabotropic glutamate receptor in C6BU-1 glioma cell has NMDA receptor-ion channel complex-like properties and interacts with serotonin-2 receptor-stimulated signal transduction." J.Neurochemistry. 63. 1346-1353 (1994)
• [文献書誌] 三国雅彦: "不安の制御物質とその神経回路網" 脳と精神の医学. 5. 253-261 (1994)