精神分裂病の難治化(治療抵抗性再発反復性)の機構についての生物学的研究

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06670995
• 研究機関: 国立精神・神経センター
• 研究代表者: 三ツ汐 洋 国立精神・神経センター, 神経研究所・疾病研究第3部, 研究員 (90175612)
• 研究分担者: 綱島 浩一 国立精神, 神経センター・神経研究所・疾病研究第3部, 研究員 (30197743) ; 堀 彰 国立精神, 神経センター・神経研究所・疾病研究第3部, 研究員 (70261188)
• キーワード: 精神分裂病 / 治療抵抗性 / 血液生化学 / ニューロケム

研究概要

我々は難治性精神分裂病、すなわち治療抵抗性および再発反復性の精神分裂病の病態解明を目的に研究している。治療抵抗性分裂病が発病時の状態、経過と転帰に特徴のある一つの亜型である可能性が強いでの、今年度は入院患者を対象に血液生科学的所見について検討し、治療抵抗性分裂病の生物学的特徴について検討した。
対象は武蔵病院に入院中の精神分裂病(ICD-10)患者30例、コントロールは健康診断を受けた健常志願者20例である。患者では早朝空腹時、健常者では絶飲食で午前10時前後に採血し、多チャンネル電気化学検出器付き高速液体クロマトグラフィー(Neurochem)を用いて血漿中物質濃度を測定した。
Neurochemは、ク-ロメトリック方式の電極16個を直列につなぎ、酸化還元物質を選択的に三次元的に分離検出できる装置で、生体資料のように複雑なものでも、簡単な前処理のみで定量可能となる場合が多い。なお、標準溶液には、患者10例と健常者10例の混合血漿液を用いた。
患者は、男性25例(83%)、女性5例(17%)、平均年齢53±19歳(M.±S.D.)、健常者は、男性18例(90%)、女性2例(10%)、平均年齢50±10歳(M.±S.D.)で、両者の性別、年齢に有意差はなかった。
標準血漿溶液中に160個の物質のピークを認めた。このうち、患者と健常者で有意差の認められたピークは26個で、精神分裂病で有意に高値であったピークは10個、有意に低値であったピークは16個であった。
各ピークと臨床的項目の関連を検討した結果、年齢あるいは薬物との関連が推定されたピーク、年齢や薬物と関連がなく精神分裂病の重症度とのみ関連した興味深いピーク、健常者には検出されたが、精神分裂病では検出されなかったピークが認められた。今後、これらのピークの同定を試みるとともに、それらと精神分裂病との関連についてさらに検討する予定である。

研究成果

• [文献書誌] 寺田倫,大沼悌一,堀彰: "てんかん精神病の精神症状評価" 精神医学. 38・3. 295-300 (1996)
• [文献書誌] 寺田倫,松田博史,堀彰,他: "精神分裂病患者のhaloperiodol負荷によるSPECT所見,予備的研究" 脳と精神の医学. 7・4. 445-451 (1996)
• [文献書誌] 綱島浩一,定松美幸,加藤進昌: "不眠症の診断と治療" ファルマシア. 33・3. 266-269 (1997)
• [文献書誌] 綱島浩一,加藤進昌: "中枢神経系のソマトスタチン,最近の文献を中心に" 精神神経薬理. (印刷中).
• [文献書誌] Arinami T,Li L Mitsushio H,et al.: "An inserlion/deplection polymorphism in the angiotensin converting enzyme gene is associated with both broin substance P contents and affective disorders" Bioligical Psychiatry. 40. 1122-1127 (1996)
• [文献書誌] 三ツ汐洋,小宮山徳太郎,村松玲美,他: "アルコール依存症の前頭葉機能障害" 日本アルコール精神医学雑誌. 3. 41-48 (1996)
• [文献書誌] 平井茂夫,堀彰,有馬邦正,他: "新精神科選書18,「向精神薬による無顆粒球症の顆粒球コロニー形成刺激因子による治療」" 診療新社,大阪(印刷中),
• [文献書誌] SperKG,schwartzer C,Hoflehner J,Tsunashima K,et al.: "The Hippocampus : Function and Clinical Relevance,“Neuropeptides as markers for functional changes in the hippocampus of epileptic rats"" 265-274 (1996)