研究概要 |
動脈硬化性疾患の強力な危険因子であるリポ蛋白(a)(Lp(a))について、カニクイザルを用いた代謝の解析を行った。716頭のカニクイザルの血清Lp(a)濃度は55.3±22.7mg/dlであり、0-140mg/dlの間に分布していた。サルの年齢0歳から19歳にわたって、血清Lp(a)濃度の平均と分布はほぼ一定しており、血清Lp(a)濃度と血清総コレステロール値には弱い正の相関が認められた。トリグリセリドおよび空腹時血糖とのあいだには相関は認められなかった。479頭のカニクイザルについてapo(a)表現形を解析した結果、カニクイザルのapo(a)にはヒト同様分子量多型が存在し、少なくとも10種類の分子量多型が存在することが明らかとなった。Apo(a)分子量多型とその頻度、血清Lp(a)濃度は、F:0.0%,B:2.1%(58.8±20.9mg/dl),S1:13.8%(60.1±19.0mg/dl),S2:45.9%(60.3±18.1mg/dl),S3:31.5%(50.3±19.7mg/dl),S4:4.2%(26.7±18.4mg/dl),Null:2.5%(2.3±3.0mg/dl)であり、S2が最も頻度が高く、apo(a)分子量と血清Lp(a)濃度には負の相関が認められた。家系の明らかなカニクイザルについて血清Lp(a)濃度とapo(a)表現形の関係をみると、apo(a)はco-dominantに遺伝することが明らかとなった。サルの肝臓をコラゲナーゼで潅流して細胞を分散し、無血清培地中での肝細胞の初代培養法を確立した。Apo(a)の遺伝子上にはサイトカイン反応部位が推定され、ヒトの患者においてもIL-6と血清Lp(a)濃度に正相関が見られたため、培地中に種々のサイトカインを加え検討したところ、IL-6の添加で肝細胞からのLp(a)分泌の促進が見られ、TGF-βの添加では抑制が見られた。TGF-βにはIL-6による促進を抑制する効果も認められた。今後、遺伝子レベル、個体レベルでのサイトカインによる合成調節の検討を行う予定である。
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