動脈硬化性疾患の強力なリスクファクターであるリポ蛋白(a)(Lp(a))について、その合成調節および、糖尿病、腎疾患における高Lp(a)血症の成因を解明する目的で、臨床研究を行い、また、基礎研究としてカニクイザル個体、初代培養肝細胞、apo(a)遺伝子を導入したヒト肝癌細胞を用いて研究を行った。糖尿病において、血清Lp(a)濃度は健常人に比し高値であった。一方、apo(a)の多型頻度分布は健常人との間に差はなく、濃度の差は、糖尿病によりそれぞれ多型において濃度が上昇したためと考えられた。慢性透析患者において血清Lp(a)濃度は健常人に比し高値であり、Lp(a)濃度は血清IL-6濃度との間に正相関が見られた。カニクイザルの血清Lp(a)濃度は0-140mg/dlに分布し、ヒトと同様にapo(a)の分子量多型を有し、分子量と濃度の間に負の相関が見られた。また、血清濃度とapo(a)多型はco-dominantに遺伝していた。カニクイザルにIL-6を静注すると血清Lp(a)の増加が見られた。カニクイザル肝細胞の初代培養法を確立し、肝細胞の倍地中にIL-6を添加するとapo(a)の分泌が亢進した。ヒトapo(a)遺伝子DNA上流転写制御領域をPRCによりクローニングし、これをルシフェラーゼ発現ヴェクターpGVBに組み換え、ヒト肝癌細胞HepG2に導入し、形質転換細胞株HepG2(a)を樹立することに成功した。IL-6はHepG2(a)においてapo(a)の遺伝子の転写活性を促進することが認められ、透析患者における血清Lp(a)濃度の高値は、IL-6の上昇によるものであることが明らかになった。
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