研究概要 |
リポ蛋白(a) (lipoprotein (a), Lp (a))は動脈硬化性疾患の強力なリスクファクターとして知られているが、ヒトとサルにしか存在しないため実験系に乏しく、基礎的研究が立ち後れている。この度、研究代表者らは、高Lp (a)血症を呈する糖尿病と慢性腎疾患(慢性透析)に焦点を絞り、臨床的検討、および、カニクイザルとapo (a)遺伝子を導入した肝細胞株を実験系として、糖尿病で影響を与えるインスリンとブドウ糖、腎疾患において血清濃度の上昇するサイトカインのapo (a)合成および遺伝子転写に関する検討を行った。 糖尿病において血清Lp (a)濃度は健常者に比しが高値であり、糖尿病性細小血管障害の重症度およびHbAlcと正相関を示した。尿中Cペプチド排泄量と血清Lp(a)濃度とは負の相関を示し、インスリンの作用の不足が糖尿病における血清 Lp (a)濃度上昇に関与していることが示唆された。カニクイザル初代培養肝細胞およびHepG2 (2)細胞を用いた系では、インスリンは、10pMから1μMの範囲で、apo (a)のプロモーター活性を用量依存的に抑制し、ブドウ糖濃度によるapo (a)の転写活性の増加は、浸透圧非依存的で、用量依存的であった。慢性腎不全血液透析患者の血清Lp (a)濃度および血清IL-6濃度はともに高値であり、有意な正の相関を示した。IL-6はLp (a)の合成をapo (a)の転写レベルで促進することがカニクイザル初代培養肝細胞およびHepG2 (a)細胞をもちいた検討より明らかとなり、慢性腎不全血液透析患者や炎症時に血清Lp (a)濃度が高値であることにIL-6が関与していることが示された。またTGF-β1およびTNF-αは、apo (a)プロモーター活性を抑制した。
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