研究概要 |
インスリン分泌機序と糖尿病における異常を究明するために、今回はCD38抗原(ADP-ribosylcyclase)のインスリン分泌細胞での発現,およびインスリン分泌における意義について検討し、以下の結果を得た。 1)CD38抗原はインスリン分泌細胞(Min6細胞)の細胞表面に局在し,Western Blot解析では41kd付近に抗CD38抗体陽性の蛋白が認められた。2)抗CD38モノクローナル抗体(T10;mouse IgGl)処理によって、D-glucose(20mM),D-mannose(20mM),L-arginine(10mM),a-KIC(10mM),glucagon(1mM),forskolin(10mM),Carbamylcholine(100mM)、などによるインスリン分泌が強く抑制されたが,glibenclamide(1mM)によるそれは逆に増大させる傾向が認められた。3)抗CD38抗体処理はD-glucoseによる[Ca^<2+>]i反応を遅延,低下させた。4)CD38抗原のフラグメント287-297(N-CVKNPEDSSCT-C)、)に対するポリクローナル抗体(287-Ab)を作成して検討したところ287-Abには、抗CD38モノクローナル抗体と同様に、D-glucoseによるインスリン分泌、[Ca^<2+>]i反応をを抑制した。5)フラグメント241-255(N-CSNNPVSVFWKTVSR-C)に対する抗体(241-Ab)はインスリン分泌に明らかな効果を及ぼさなかった。 以上より、CD38抗原は膵B細胞内情報伝達系に深く関与おり,ADP-ribosyl cyclaseがインスリン分泌における情報伝達系の重要な一部であることが強く示唆された。CD38蛋白のなかでも特に、フラグメント287-297近傍がインスリン分泌,この膜外蛋白の構造のなかで重要であることが明かになった。
|