平成6年度には以下の実験・研究を行った。 1.われわれが既にバゾプレシン遺伝子上において確認した各種の異常を持つcDNAを、正常人のバゾプレシンcDNAをテンプレートとし作成しsingle-stranded DNAを調整後、シークエンスを確認の上精製を行いexpression vectorに挿入した。発現細胞にはArT-20細胞を用い、mutant cDNAのtransfectionを行い、stable cloneを得た後、以下の実験に供した。2.パルスチェイス実験は^<35>Cysでラベル後一定時間後にmediumと細胞について免疫沈降を行い、dibutyryl cyclic AMP等のsecretagogueの影響も同時に検討中した。免疫沈降にはバゾプレシン、ニューロフィジンの抗体を用い経時的変化を観察した。3.また、mediumおよび細胞内のバゾプレシン量をradioimmunoassay法により測定するとともにパルスチェイスと同様secretagogueの影響を検討し、ゲル濾過による分子量の確認も同時に検討した。4.さらにこの細胞系を用い、抽出したRNA量をnorthern blot analysisにより解析し、転写効率についての検討も行った。 以上の研究によって、バゾプレシン遺伝子の異常に基づく蛋白発現の障害機構の一部が明らかとなり、バゾプレシン前駆体蛋白のプロセシング障害とその細胞内発生箇所、蓄積した異常蛋白による細胞機能障害が二次的に惹起され、成熟ペプチドであるバゾプレシンの合成分泌障害が引き起こされることが示された。
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