研究概要 |
今回の研究では、わが国における家族性中枢性尿崩症の6家系において各々の遺伝子変異の存在を明らかにするとともに、その異常がどのようなメカニズムにより蛋白レベルの異常を発現するかについての検討を行った。バゾプレシン(AVP)遺伝子上で各種の異常[ニューロフィジン(NP)領域の変異が5家系、シグナルペプチド領域の変異が1家系]を確認し、これらの変異をヒトAVP cDNAにsite directed m ut ag en esis法を用い導入した。 この変異cDNAをexpression vectorに組み込んだ後、AtT-20細胞に導入し培養液中に分泌されるAVP量を測定するとともに、ルシフェラーゼの発現ベクターを導入し、cell lysateのルシフェラーゼ活性を測定することによりintemal controlとした。その結果,AVPの分泌量はNP領域の変異ではwild typeの2〜20%、シグナルペプチド領域の変異では30%と著明な低下を認めた。さらに、すべての家系の家族性中枢性尿崩症発症者がheterozygoteであることから、各々の変異AVPcDNAと正常AVPcDNAを等量同時に導入したところ、いずれの変異もAVPの分泌は正常cDNAのみを導入したものに比べ低下はみられず,do mi na nt n eg ative効果はないことが確認された。また、stable cloneを得た後、^<35>Cysでラベルを行い一定時間後に培養液と細胞についてNP抗体により経時的に免疫沈降を行った結果、いずれの変異においてもAVP前駆体蛋白のプロセシング効率の明らかな低下と、前駆体蛋白および異常ニューロフィジンの細胞内貯留が認められた。 以上により、AVP変異遺伝子発現機構の一部が明らかとなったが、今後さらにAVP合成・分泌機構におけるAVP前駆体蛋白の細胞内輸送とその障害の発生についての解析を深めたい。
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