研究概要 |
高血糖における奇形の発生機序をフリーラジカルおよびスカヴェンジャーシステムの面から検討した。我々はembryo culture systemを用い、高血糖(72mM glucose)で培養したembryoにおける奇形の発生機序としてフリーラジカルの増加に対しglutathione(GSH)を中心とするスカヴェンジャーシステムが低下を示す事が重要である事を示した(Diabetes44:992,1995)。本年度は妊娠糖尿病ラットにおいてGSHの腹腔内投与を行なう事によりembryoにおける奇形の発生が抑制出来るかとうか検討した。streptozotocin(65mg/kg体重)を投与し、糖尿病ラット(20mM glucose以上)を作製し、matingを行ない、妊娠糖尿病ラットを作製した。主な器官形成期に相当する妊娠第6日〜11日に腹腔内にGSHを投与し、妊娠第11日(embryo cultureが終了する時期)にembryoを取り出し、奇形の発生頻度、embryoのGSH濃度およびGSH関連諸酵素の測定を行なった。1)正常妊娠ラット群 2)妊娠糖尿病ラット群 3)妊娠糖尿病ラット+インスリン治療群 4)妊娠糖尿病ラット+GSH投与群 の各群において検討した。糖尿病ラット群では正常妊娠ラット群に比し、発育遅延、奇形の発生頻度(神経管閉鎖不全21%vs2%,p<0.01)は増加した。妊娠糖尿病ラットにGSHを投与する事により、奇形の発生頻度は著明に減少した(1%vs21%,p<0.01)。また、糖尿病ラットのembryoは正常妊娠ラットに比し、フリーラジカルの増加を示し、embryo内のGSH濃度は低下を示した。しかし、GSH投与により、フリーラジカルの産生は低下し、GSH濃度は上昇し、正常妊娠ラットのレベルに帰った。従って妊娠糖尿病ラットの奇形の発生機序として器官形成期のembryoにおいてフリーラジカルの増加に対し、スカヴェンジャーシステムが枯渇し、細胞防御機構が低下を示す事が重要だと考えられた。
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