研究概要 |
1.放射線照射による甲状腺細胞の応答について 甲状腺細胞において放射線照射による生理的および癌化後の細胞内応答変化を調べるために、甲状腺初代培養細胞と癌細胞継代株を用いて実験をおこなった。まず放射線2Gy照射後の生存率は初代細胞18%、癌細胞株では58%以上であった。また細胞周期解析では初代細胞ではG1期周期停止を認めたが、p53遺伝子に変異を持つ癌細胞ではG1期周期停止はおこらずG2期で周期停止を認めた。こうした現象は細胞内蛋白p53の異常の有無に由来するためと考えられた。さらに放射線照射により甲状腺細胞に特異的な反応が起こりうるかp53下流遺伝子群(p21/WAF1,GADD45,Bax,FAS)の反応について調べたところp21/WAF1では照射後に発現増加を認めたがGADD45、Bax、FASは発現に変化を認めなかった。また、初代培養細胞では正常p53が存在するにもかかわらず放射線によるアポトーシスが起こりにくいことがわかった。これより、放射線に対し甲状腺細胞では特異的な反応が認められることが確かめられた。この結果はCancer Res.に掲載された。 2.セミオート尿中ヨード測定法の開発 甲状腺の分化、増殖に関与する因子の一つとしてヨードがある。このヨード摂取の量を正確かつ迅速に測定するために、尿中ヨードのセミオートマチック測定法を開発した。この測定法では多数のサンプル(30/時間)を処理することが可能であり従来の測定法と比較検討し同程度以上の感受性を有していた。この結果はClinical Chemistryに掲載された。
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