(1)我々が作製したヒト膵臓ラ氏島β細胞由来cDNAライブラリーからクローニングして得られたGAD65及びGAD67を大腸菌で産生させ、これを抗原としてアッセイすると、抗血清とは強く反応するが患者血清とはほとんど反応しなかった。そこでレトロウイルスベクターを用いてNIH/3T3及びCHO細胞で発現させ、これらを抗原としてウエスタンブロットを行っても患者血清とはほとんど反応しなかった。しかしながら最初に患者血清でGADを発現させた細胞のライゼ-トを免疫沈降させた後、SDS-PAGEで分離し、抗血清を一次抗体としてウエスタンブロットを行うと、GADのバンドを検出できた。すなわち上記のことより、GAD対する抗血清はリニアエピトープを認識できるが、患者血清が認識するエピトープは一次構造を取らないことが考えられた。 (2)(1)で述べた方法、すなわち免疫沈降-ウエスタンブロット法(IP-Western法)を用いて抗GAD抗体のアッセイ系を確立することができた。現在IDDMの診断に応用されている。 (3)当初はヒトGAD65のみならずヒトGAD67に対するアッセイ系も確立する予定であったが、ヒトGAD67を真核細胞で発現させることがヒトGAD65に比して困難であったため、現在確立できたものはヒトGAD65に対する自己抗体のアッセイ系のみである。 (4)免疫沈降-ウエスタンブロット法(IP-Western法)を用いることにより抗GAD抗体のアッセイが可能になったため、現時点ではリコンビナント蛋白の精製までは行っていない。 (5)IDDM患者血清を用いてクローニングしたGAD以外の自己抗原の解析に関しては、現在欠失クローンの作製まで終了しているので、平成7年度はこれらののクローンの塩基配列を常法に従い決定する予定である。
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