研究概要 |
糖尿病患者や高インスリン血症耐糖能異常肥満患者に認められるグルカゴン分泌異常がインスリンを追加注入することにより正常化することから,膵A細胞におけるグルカゴン分泌に際してインスリンの重要な役割を担うため,膵A細胞上にインスリン・レセプターが存在することが示唆されたが,未だインスリン・レセプターを証明しえた報告はなかった。本研究では,ハムスター由来のグルカゴン分泌腫瘍細胞であるIn-R1-G9細胞及びマウス由来のグルカゴン分泌腫瘍細胞であるαTC clone 6細胞を用いて,膵A細胞上のインスリン・レセプターの有無を検討する。 1.グルカゴン分泌に対するインスリン添加の影響:培養液中へのグルカゴン分泌はインスリンの添加により濃度依存性(10^<-4>〜10^<-6>M)に抑制された。 2.インスリン・レセプターmRNAの検出:In-R1-G9及びαTC clone 6よりmDNAを抽出後,インスリン・レセプターに特異的な塩基配列を持つ合成oligonucleotideを作製,これをプライマーとして用いRT-PCR法を施行し,微量のインスリン・レセプターmRNAを増幅,検出した。また,インスリン・レセプターcDNAをプローブにNorthern blot法を施行して,インスリン・レセプターmRNAを検出した。 3.インスリン・レセプター抗体を用いて,酵素抗体法により,細胞膜表面にインスリン・レセプターのpositive stainingsを認めた。また,^<35>Sメチオニンラベルした細胞から蛋白を調整し,SDS-PAGEを施行,インスリンレセプター蛋白の存在を証明した。 4.インスリン・レセプター・アッセイ法によりグルカゴン産生腫瘍細胞(In-R1-G9及びαTC clone 6)上のインスリン・レセプター数は約2万と推定された。 以上より膵A細胞上のインスリン・レセプターの存在が示唆された。
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