研究概要 |
大動脈器官培養の系を使用し動脈のファイブロネクチン,コラーゲンやアクチンの遺伝子発現をノーザンブロット法及びIn situ hybridization法にて分析した.すなわちラットの胸部大動脈より大動脈輪を作成し,培養液Dullbeco's Modified Eagle Medium中にて培養した後,組織固定及びRNA抽出を行った。培養6時間頃に内皮細胞及び平滑筋細胞において胎児型ファイブロネクチンの発現が著明に増加し,α-アクチンの発現は消失した。この事より平滑筋細胞のフェノタイプが収縮型から合成型へ変換していることが示唆された.ファイブロネクチンの発現増加はチロシンキナーゼインヒビターのGenisteinやプロテインキナーゼCインヒビターのStaurosporineにより用量依存的に抑制された.逆にセリン/スレオニンプロテインフォスファターゼ1,2AインヒビターのOkadaic acidにより発現が増加した.これらのことより,チロシンキナーゼ及びプロテインキナーゼCが平滑筋細胞の収縮型から合成型への変換に関与していることが示唆された. 次に,ファイブロネクチンの発現に関与する遺伝子発現を調べるため,Immedeiately onsetgeneと言われるProtooncogeneであるc-fos,c-myc,そしてHeat Schock Protein70(HSP70)の遺伝子発現を検討した.インキュベーション30min後にc-fosのmRNAレベルが上昇し,続いてc-myc,HSP70のmRNAレベルが上昇した.これらの遺伝子発現はファイブロネクチンとは違って一過性であり,6時間後にはほとんど消失した.そしてこれらの遺伝子発現も,GenisteinやStaurosporineにより用量依存的に抑制され,逆にOkadaic acidにより発現が増加した.これらのことより,チロシンキナーゼ及びプロテインキナーゼCがEarly onset geneであるc-myc,HSP70の遺伝子発現及にも関与しており,平滑筋細胞の形質変換への関与が示唆された.
|