研究概要 |
ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)を用いて高糖濃度刺激として5.5-55mMのD-Glucoseまたは浸透圧対照のMannitolを含む培地にて培養した。24時間後に糖化処理したLDL,VLDL,またはLysophospatidylcholine(Lyso-PC)(酸化LDLやbeta-VLDLで著名に増加するリン脂質)にて4時間刺激を行い、^<51>CrでラベルしたTHP-1細胞(単球由来)と20分間共培養後、HUVECに接着したTHP-1細胞数を放射活性により検討した。LDL,VLDLはヒト血清より超遠心法にて分離し、糖化処理は50mM glucose37℃にて5日間インキュベーションして行った。 【結果】(1)グルコースの影響:5.5,16.5,33.0,55.0mM glucoseにて濃度依存性にTHP-1細胞のHUVECへの接着は増加し,55mMにて1.64±0.17倍増加した(p<0.005).4時間の暴露では,増加は認められなかった。浸透圧コントロールのMannitol群では55mMにて1.22±0.18倍の増加傾向が認められたが有意ではなかった.(2)リポ蛋白の影響:300μg protein/mlのLDL,或いはVLDLにて単独刺激するだけでは、THP-1細胞のHUVECへの接着は変化なかったが,予め24時間55.0mM glucoseにてインキュベーションしたHUVECを同濃度のLDL,或いはVLDLにて刺激したものはそれぞれ1.83±0.45,2.61±0.6倍増加した。Lyso-PC刺激に対する反応性は、1,10,100μMに対し各々高糖濃度群1.88±0.27,1.91±0.27,1.31±0.2倍,浸透圧対照群1.44±0.3,1.44±0.2,1.91±0.1倍と高糖濃度処理群で反応性は増大していた。糖化LDL,VLDL単独処理では接着は増加しなかったが、高糖濃度処理群では各々2.30±0.55,2.61±0.66倍に増加していた。以上より(1)HUVECにおいて、リポ蛋白や酸化脂質による接着因子の発現は高糖濃度刺激により促進されているものと考えられた。(2)LDLのみならずVLDLも接着因子の発現といった点より糖尿病性大血管障害の危険因子となりうることが示唆された。
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