研究概要 |
血清CETP活性はコレステロール逆転送系で重要な役割を果たしている蛋白であり、その欠損症患者は著明な高HDL血症を示すことが知られている。我々は健常成人を対象に、血清CETP活性のリポ蛋白代謝に与える影響とCETP活性を規定する因子を検討した。対象は山梨県在住の健常成人586名(男性317名,女性269名;平均年齢52.2±10.9歳)である。対象者の血清脂質値,アポ蛋白値,CETP活性,LCAT活性(Nagasaki-Akanuma法)を測定し、飲酒量,喫煙量を聞き取り調査した。対象者の血清CETP活性の平均値は193.0±48.6nmol/ml/hrであった。血清CETP活性と脂質,アポ蛋白値の相関を多変量解析にて検討したところ、CETP活性はLDLコレステロール,アポ蛋白E濃度,血清LCAT活性と有意の正相関が認められ、アポ蛋白A-I濃度と有意の負の相関が認められた。次に一次分散分析法にてCETP活性の影響因子を検討したところ、女性のCETP活性は男性より有意に高値であった。しかし男女ともに、加齢に伴うCETP活性の変動は認められなかった。また飲酒、喫煙にてCETP活性は有意に低下していた。CETP活性がLDLコレステロール,アポ蛋白A-Iと相関していたにも関わらず、アポ蛋白B,HDLコレステロールと相関が認められなかったことより、CETPはLDL粒子のコレステロール含有量とHDL粒子数を規定していることが示唆された。また女性にてCETP活性は高値を示したが、その活性が年齢により変動しなかったことより、CETP活性の性差は性ホルモンのみによっては説明できない可能性が考えられた。
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